AIに何かを尋ねると、すらすらと答えが返ってきます。文章は整っていて、自信に満ちていて、出典まで添えてあることもある。
そして、まるごと間違っていることがあります。
この現象は「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれます。AIを使ううえで、これを知っているかどうかが最大の分かれ目です。
なぜ「分かりません」と言わないのか
技術的な説明を省いて、実用上いちばん役に立つ理解をお伝えします。
AIは、事実を調べて答えているのではありません。
膨大な文章を学習した結果、「この質問には、こういう言葉が続くことが多い」という予測で文章を作っています。
つまり、答えているのではなく「答えらしいもの」を組み立てているのです。
だから、答えらしい形は完璧なのに中身が事実でない、ということが起こります。そしてAI自身は、それが事実かどうかを判断していません。嘘をついているつもりもありません。
間違えやすいのはどこか
やみくもに疑う必要はありません。間違えやすい場所は決まっています。
| 内容 | 危険度 | 理由 |
|---|---|---|
| 統計・数値・年号 | 高 | もっともらしい数字を作り出します |
| 固有名詞(店名・書名・法律名) | 高 | 実在しないものを平然と挙げます |
| URL・出典 | 高 | 存在しないリンクを作ることがあります |
| 最近の出来事 | 高 | 学習した時点より後のことは知りません |
| 専門分野の細部(医療・法律) | 高 | 断定的に、かつ誤って答えることがあります |
| 文章を整える・言い換える | 低 | 事実を必要としないので安全です |
| アイデア出し・叩き台 | 低 | 正しさより発想が目的なので問題ありません |
| 一般的な考え方の説明 | 中 | 大筋は合っていることが多いですが確認を |
この表を頭に入れておくだけで、事故はほとんど防げます。「事実」を扱うときは疑い、「言葉」を扱うときは信じる。これが目安です。
見抜く3つの方法
1. 「分からないなら分からないと書いて」と先に言う
これを入れるだけで、正直に「分かりません」と返ってくる割合が上がります。最も手軽で効果的な対策です。
2. 同じことを2回、別の聞き方で尋ねる
本当に知っていることなら、聞き方を変えても答えは同じです。答えがぶれたら、それは作られた答えだと考えてください。
3. 固有名詞と数字は、必ず自分で確認する
店名が出てきたら検索する。数字が出てきたら出典にあたる。面倒ですが、これに代わる方法はありません。
AIが出してきたURLをそのまま開いてみるのも有効です。存在しなければ、その情報全体を疑うべきです。
絶対にAIに決めさせてはいけないこと
② お金。投資判断、保険の選択、税務処理。
③ 法律。契約の可否、権利関係の判断。
これらは間違いがそのまま実害になる領域です。調べる道具としては使えますが、決める役割は必ず人が持ってください。
それでもAIは使う価値がある
ここまで読んで「やっぱり危ないのでは」と思われたかもしれません。
そうではありません。間違える道具だと知って使えば、AIはきわめて強力です。電子レンジも包丁も、性質を知らずに使えば危ないのと同じことです。
むしろ危ないのは、AIは何でも正しく答えてくれると思い込んでいる状態です。この記事を読んだ方は、もうその状態ではありません。
まとめ
- AIは事実を調べていない。答えらしい文章を組み立てている
- 数字・固有名詞・出典・最近の出来事が特に危ない
- 「推測で補わないで」を毎回添える
- 健康・お金・法律は、必ず人が決める
▶ あわせて読みたい:AIに健康のことを聞いてもいい? / 思い通りの答えが返ってくる頼み方の型
「読んだけれど、自分でやると手が止まる」という方へ。マンツーマンの個別相談(60分・3,300円)で、この記事の内容をご自分の仕事や暮らしに当てはめながら一緒にやってみましょう。
個別相談を申し込む